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2010年3月22日 (月)

「幽霊の2/3」

★★★★★。最高点をつけるのは勇気がいる。って、学生の成績つけてるわけじゃないからそうマジになることもないのか。
1962年に創元文庫から出版されたものの、その後長らく絶版となっていた作品。東京創元社文庫創刊50周年記念復刊リクエスト第1位として、昨年夏に再発売されたもの。「名のみ語り継がれてきた傑作が新訳で登場」という触れ込みだ。
ヘレン・マクロイは名前は知っていたけれど読んだのは初めてで、第1位というからには期待してしまうが、それにたがわぬ好作。1956年発表というからぼくのトシと変わらないくらい古い作品だが、読んでみるとまったく古臭さを感じない。登場人物はみな魅力的に生き生きとして、情景描写も気がきいて美しく、さながら映画のワンシーンを見ているよう。会話、地の文とも語彙、表現、比喩などを含め文章がすばらしい。たとえばヴィージー家のあわただしい朝のひとコマなど、本筋とは何も関係ないところまで血が通っていてうならされる。
これは著者の力でもあり、訳者の力でもあるだろう。筋書きはともかく、表に出ている日本語を書いているのは訳者なのだから、これは駒月雅子という訳者の感性というか筆力も大いに与っているに違いない。名著に名訳あり、幸運な組み合わせというしかない。
参加者の限られたホームパーティの席上で起こる毒殺事件。だが、ミステリーとしての犯人やトリック探しはこの作品にはたぶんあまり重きがおかれていない。誰が犯人かというよりは、知られざる前半生をもつベストセラー作家にまつわる謎がサスペンス仕立てで解き明かされていく行程を楽しむべきものだろう。プロットや意外性はそれほどではなくとも、物語りの作り方、文章のうまさがそれを補って余りある。
これはヘレン・マクロイの15番目の長編というからびっくり。残りのうちどれだけが入手可能なのかわからないけれど、俄然楽しみになってきた。

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