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2010年4月25日 (日)

「七人のおば」

★★★★★。
 アル中のイーディスのことば「飲んでるあいだは悪いことをささいに感じ、いいことを重大に感じるだけの話。オペラ・グラスを反対側からのぞくようなものね。結局、メモなんかするのはむだだったのよ。紙きれにはなんの魔力もないわ。魔力をもつのはお酒の壜よ」
 う~む、深い。酒飲みの心理を見事についている。こういう人間心理の機微が随所に織り込まれて、それがこの破天荒な家族の物語に深みを与え、ドタバタ劇あるいは昼メロに堕するのを救っている。
 クララ、テッシー、アグネス、イーディス、モリー、ドリス、ジュディ。タイトル通り7人のおばの系図、そしてそれぞれの連れ合い。扉に書かれた14人+αの名前にまずは怖気をふるう。登場人物が多く関係が複雑で、誰が誰だかいちいち表を見返さないとなかなか頭に入らない小説につきものの、ストーリーにはいるまでの試練が頭をよぎる。だがしかし、この小説に限ってそれは全くの杞憂に過ぎない。
 7人の主人公の性格がそれぞれきわめて明確に染め分けられていて、混同しようもない。読んでも読んでもいまいち登場人物の人間描写が拙劣で頭にはいりにくい小説が多い中で、この著者の筆力には脱帽してしまう。表現、文章のうまいこと。もちろん訳文も。マクロイを読んだときも感じたことだが、作者と訳者のコンビネーションプレーの勝利だろう。
 7人それぞれが人間臭く、魅力ある。誇張されてはいるけれど、いかにもありそうという感じ。しかしその個性的すぎる7人が暮らしていくのだから騒動が多発しないはずはない。全編そればかりといって過言ではない。あれぼくはミステリを読んでるんじゃなかったっけ、そこで、ああこれはサリーとピーターの寝物語なんだったと気づく。
 誰が誰を殺したってちっともおかしくないこれでもかこれでもかという愛憎劇の連続。それだけでも物語としては十分だ。だけどこれはミステリであり、作者はちゃんとそれなりの解決編を用意している。仕かけられていた、たったひとつのちょっとしたトリック。それがすべて。最後の最後の8ページで納得の真相が明かされる。読み終えてみるとこれはきわめてまっとうでフェアなミステリなのだと気づく。すばらしい。

今日のランニング。16.4km/106min。今月の累計距離101.7km。

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