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2010年5月12日 (水)

「荘子物語」

★★★☆☆。
 ぼくは逃避隠棲志向型なので、老荘思想は昔から好きだった。「老子」は短くてすぐ読めるけれど、「荘子」は長大で岩波文庫版をもってはいるけれど通読したことはない。どこでどう見つけたのか忘れたけれど、諸橋轍次「荘子物語」が講談社学術文庫から出ているのを目にして、手にとった。
 大漢和辞典の諸橋轍次博士が他界してもう30年近くがたつ。この原著は1964年刊だからもう45年も前だけれど、もともとの底本は大古典だから古くてどうというものではない。著者晩年の説明文はなかなかに滋味豊かで味わい深い。荘子の特徴である豊富な寓話を自由自在に解き明かし、難解な内容も簡明に書き下してあるので、とても読みやすい。
 単に「荘子」の内容にとどまらず、関連する「老子」を引いたり、「論語」や「史記」に話が飛んだりしているし、もとより著者の考え方や感想がはいりこんで引きずられている部分があったりして、中立な学術的解説書とはいいがたいが、読み物としてみればおもしろい、なるほどこれは物語なわけだ。
 巻末に引用部分の原文がすべて収載されているのもありがたいが、これだけまとめられるとまた読もうという気にはならないので、それぞれの本文の箇所に挿入してあったほうがよかったと思う。せっかくの物語が断片化されてしまうけれど。
 有名な「井蛙海を語るべからず」ももちろん出てくる。「井の中の蛙、大海を知らず」ということわざとなって人口に膾炙しているが、この後に「されど、空の深さを知る」と付け加えたのは日本人の創意だそうだ。できすぎという感もあるが、荘子が聞いたらなんと返すだろうか。

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