« 虫の知らせ | トップページ | なんぢらの中、罪なき者まづ石を擲て »

2010年7月 5日 (月)

「食のリスク学」

★★★☆☆。
 内容を見ないでタイトルだけで買うとこういうことになる。まとまった書き下ろしではなくて、講演、対談、ブログなどをまとめたよくある編集本だった。なので内容はいいけど少し減点。2000円もするのだから本はちゃんと書いてよね。
 「食の安全・安心」がひとつのキーワードになっている時代なので、この手の本は最近よく目にする。本書にも登場する、松永和紀、高橋久仁子、畝山智香子あたりが情報発信源で、ぼくも何冊か読んでいる。いかにもまっとうな内容であり、巨大情報源であるマスコミやネットが大量かつ無責任に垂れ流している内容と相容れない科学的誠実さに満ちている。
 本書は、著者の専門領域であるリスク評価の観点で定量的な考察がなされているところがセールスポイントだろう。取り上げられている内容は目新しくないけれど、数式できちんと説明されるととても説得力がある。人は自分の財布で買い物するときは真剣にコスト計算するくせに、一般論になると偏執狂のようにゼロリスクをもとめがちだ。それがいかに不合理で、間尺に合わないか、それはリスクベネフィット計算で明快にあらわされる。
 が、本というものは数式がひとつ出てくると売り上げが10%落ちるという説があるように、だから一般受けするかというとそれは別問題だ。よほど関心のある人以外、2000円払って一般の人は買わないだろう。なら手軽な新書判くらいに書き直したらどうだろうか。主婦は買ってくれるだろうか。たぶん似たようなものではないか。テレビのワイドショーで集中して取り上げたらどうだろう。おそらくそれが一番効果があると思う。だけど絶対テレビ局はやらないだろう。
 一般市民がテレビや新聞が客観的で正確な情報源だと根本的な誤解をしているうちは、食の安全に限らず社会がいい方向に向かうとはとても思えない。

« 虫の知らせ | トップページ | なんぢらの中、罪なき者まづ石を擲て »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

食と健康」カテゴリの記事

CLICK !

  • おもしろ有機化学ワールド



twitter

2024年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ