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2010年10月22日 (金)

「一週間」

★★★★☆。
 久々に読んだ井上ひさし。が、残念ながらこれが遺作。あとがきによれば、雑誌に連載終了の後、単行本化の際に著者が加筆修正する予定だったのがかなわないまま逝去したのだそうだ。著者は多少不本意だったかもしれないけれど、とりあえず小説としては完結しているので、おもしろく読めた。
 主人公である日本人捕虜小松修吉の終戦後のハバロフスク収容所での一週間のできごとをつづっているだけだが、そこにいたる日本での地下活動のようすや、満州に渡ってからのあれこれなど、捕虜になるまでのもろもろの回想や、現地で発行されている日本新聞の仕事として聞きとり調査した、別の日本人捕虜の珍妙脱走記などの話中話が織り交ぜられて、起伏に富んだ内容になっている。
 もとより、坦々とした収容所での日常、ロシア人将校や関係者との会話ひとつとってもおかしみにあふれているところなど、著者の面目躍如というところだろう。後半はレーニンの怪手紙をめぐる虚々実々の駆け引きで盛り上がり、あと少しというところでどんでん返しがあるなど、最後の最後まで大いに楽しめる。もともと読者を喜ばせる技術は折り紙つきだし、さすがは井上ひさし。
 あと、読んでいておおと思ったのは、対照的な河の雪解け二様を表す「武開」と「文開」。ほんとにこんな素敵な言葉があるのだろうか。それからなんといっても、長い黒髪を白ナプキンで包んだ可憐なソーニャ。ソーニャという美しい名前は、罪と罰を思い出すまでもなく、特別に心に響く。

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