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2010年10月10日 (日)

「異邦の騎士」改訂完全版

★★★★★。
 島田荘司大先生くらいになると傑作名作が目白押しだけど、どれか1冊といわれればぼくはこれを推すかもしれない。
 この作品を読むのは約20年前に次いで2回目。今回のは改訂完全版ということで作者が原作に徹底的に手を入れ直したという触れ込みのもの。詩歌のたぐいはともかく小説の再読などめったにしないのだが、あの異邦の騎士の改訂完全版となると読まずにはいられない、と大分前に買っておいた。ストーリーは変わっておらず文章を直しただけだそうだが、前の版はもう手元にないので比較ができない。
 さすがにストーリーはだいたい憶えているけれど、トリックのところなどであれこうだったかなと忘れているところも多い。まあぼくがこの作品を推すのは、ミステリとしての大きな仕掛けもさることながら、純愛小説として評価しているからなので、その点はこの改訂版再読においても変わらない。わかっていてもやはり終盤は涙、涙。20年前はもっとぼろぼろに泣いた記憶があるけれど、それは初版、改訂版の違いのせいなのか、初読、再読の差なのか、ぼくの年齢によるものなのかはわからない。
 ただ何となく感じるのは、初読のときはもっと非現実的な場面転換というか現実的に説明できない部分があったように思う。それが今回読むと、よりリアリスティックというかきちんと論理的に割り切れていて現実的な違和感が少ないと思った。改稿して作品としての完成度が上がったせいなのだろうか。著者にいわせれば、初稿は粗削りな若書きで読むに堪えないということだから、手を入れることによって大人の作品に仕上がったというべきかもしれない。けど、多少非合理な飛躍があろうとも初版は初版でファンタジーと思えばよかったのではという気もする。あるいは作品は成熟しても読むぼくの方が20年たっても成熟していないということかも。たぶん20年後に再再度読んでも、ぼくはきっと泣くのだろうな(笑)。

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