« はやぶさ展示 | トップページ | Roco Sky »

2010年11月 3日 (水)

「フロスト気質」

★★★★★。
 星が5個しかないのが残念。10個くらいつけたいところだ。
 フロストシリーズ第4作。1作ごとに長くなってとうとう上下2分冊。訳本が出たのは2年前ですぐに購入したのだけれど、読んでしまうのがもったいなくて今頃になってしまった。
 相変わらずのドタバタは絶好調。今回は長いだけあって、いくつもの事件が錯綜してよけいに混乱度が増している。最終的に全部解決したのだろうか。ん~と、してるしてる。ミステリとしても上等だ。まあフロスト物の場合筋立ては二の次であって、なんといっても人間味あふれる、あふれすぎる、逸脱しているフロスト警部の存在そのものが魅力なのは言を俟たないところだろう。まあ次から次へと出てくる悪ふざけ、下劣なジョーク、セクハラまがいの妄想や言動など、よくもこんなに楽しいやりとりを書けるものだ。著者のウィングフィールドは1928年生まれというから本作を書いたのは68歳だ。いやぁ若い。
 ただ、フロストの魅力はもちろん馬鹿騒ぎだけではない。嫌味たらしい上司に対する反骨と同僚や部下に対する心づかいを持ち合わせ、また常に弱い者の心を思いやるやさしさにあふれている。肉親を亡くした家族にそれを伝えに行くシーン、犯罪に巻き込まれた子供たちへの思い、本作にもあちこちにそれがにじみ出ている。だから読んでいて共感できる。
 そしていつも思うが、ぼくが読んでいるのはウィングフィールドの文章ではなくて芹澤恵の訳文なのだ。随所にでてくるフロストらしい言い回し。もうこうじゃなくちゃというくらいハマっている。すばらしい才能だ。もう共作といっていいのでは。たとえば「でかちん坊や」なんて原文はどうなっているのだろうと気になるけれど、フロストなら絶対こういうに違いないのだ。たぶん翻訳しているときの芹澤さんにはフロストが乗り移っているのだろう。細かいことだけど、下巻p206の「ミス・ツイン・ピークス」が訳されていないのは何でかな。これくらいならぼくだって適訳を思いつけるぞ、とてもここには書けないけど(笑)。
 作者は2007年に亡くなってしまったので、あと訳出されていないフロスト物は2作のみとなった。早く読みたいような名残り惜しいような。

« はやぶさ展示 | トップページ | Roco Sky »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

CLICK !

  • おもしろ有機化学ワールド



twitter

2024年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ