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2010年12月22日 (水)

「摩天楼の怪人」

★★★★★。
 う~ん、なんていえばいいんだろう。なんでこんなかなしい純愛ストーリーを読まされなきゃならないのか。もちろん島田荘司らしい壮大な仕掛けのミステリなんだけど、悲しすぎやしないか。
 正直いうと、ミステリとしてのトリックは大したことないし、高層ビルという舞台は大がかりだけど、純粋な知的ゲームとしての謎解きという点では物足りない。ヒエログラフの解読とその真相は想像を絶してはいるとはいえ、それは舞台装置の一部でしかない。ミステリとして評価したら星三つがせいぜいだろう。
 だけど、そんな表面的な評価で計れない感動こそがこの作品の真価だろう。この文庫判700ページに及ぼうかという大作を貫く柱になっているのは、なんと31ページの「私は七十四歳の今日まで独り身を通したけれど、少しも寂しくなんてなかった。だって、私の心の中には彼がいたから」と、それに答える661ページの「おお、なんという喜びだ! 私には祈る神がない。だが今、この瞬間だけになら、神を信じてもよい。私は報われたのだ!」。たったこれだけの言葉なのだ。それ以外のもろもろの謎や不可思議な出来事なんて、この壮大な純愛物語にとっては瑣末事でしかない。なんて悲しい、いや悲しくなんてないのか、ひょっとしてこれは類い稀な幸せなラブストーリーなのか。しかしそんな人生なんてありかよ。
 あの「異邦の騎士」を書いた島田荘司だもんな。泣かせてくれるよ、まったく。

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