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2010年12月29日 (水)

「重力ピエロ」

★★★★☆。
 秀逸なタイトルが前から気になっていた作品。背中を押してくれる人がいて読んでみた。ミステリーだと思っていたらちょっと違うんだな、なんていうんだろうサスペンスでもないし、しいていえば家族小説か。連続放火事件と現場に残された暗号の謎解きというミステリー的要素はあるけれど、それは味つけであって、主題は生みの親と育ての親という古典的命題に過去のレイプ事件の清算をからめたものだ。登場人物も少ないし、話の流れはいたってわかりやすい。相互に関連性がなさそうな挿話が最後に全部つながってゆくのだが、これだけ単純な設定だとそうならざるを得ないのであって、放火事件の謎を含めお互いの関係とかも読んでいくうちに、ああそういうことかとわかってしまう。
 泉水と春の兄弟、そして父。物語を回してゆくこの3人の会話、関係がとても心地よい。こんな親子兄弟関係っていいなあと心からうらやましくなる。ぼくは兄弟は姉ひとり、子供は娘3人、という女系家族で、しかも父親と離れて育ったので、男の兄弟、父親と息子、という関係はまったく経験がない。のでこういう家族は本当にあこがれなのだ。「小暮写眞館」の花ちゃんピカちゃんとお父さんなんかもそうだったよな。それとこの3人それぞれがもっている特徴がとても共感できる。病気そっちのけで謎解きに夢中になるお父さん、途中参加が嫌いな泉水、横断歩道の白黒を数える春。わかるわかるぼくもそういうところがあるからおかしくなるくらい。こんな家族ならさぞ居心地いいだろう。
 とまあ、こういうふうにふわふわ無重力状態で終わってしまえば、軽い読み物としてよかったのだろうけれど、重力のない世界はない。最後の最後に殺人事件が起こる。ピエロが重力に引き戻されるかのように。それはそれで十分納得できるんだけれど、結末がきっちりついていない。最後はまた無重力状態でエンディングだ。これでいいのかなあ、おめでた過ぎるんじゃないのという気がする。悪は滅びて当然、だけど滅ぼす側も何らかの責任を負うべきだとぼくは思う。なので星ひとつ減点。

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