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2011年1月15日 (土)

「GO」

★★★☆☆。
 手に取っている時点で何らかのセレクションが働いているわけだから、なんの予備知識もなしに小説を読み始めることは普通はない。これ読んでみたら、とポイと渡されて素直に従った場合を除いては。なので在日朝鮮人の少年が主人公の民族問題を扱った小説だとはページを開くまで知らなかった。あとでちょっと調べてみて、10年ほど前の直木賞受賞作で映画化されて大々的に話題になった作品ということに驚いたくらいだ。無知というのはどうしようもないものだなと思うが、そういう世間的な評価を知ったあとでも、ぼくにはこの作品の真価がよく理解できないままだ。
 朝鮮、韓国、民族、国籍、在日、差別、同化、そういう問題に対する認識というか日常性がぼくの周囲には皆無に近い。もちろんテレビで北朝鮮の拉致問題や軍事行動などのニュースは見るけれど、それは世界情勢のひとコマであって民族問題として捉えているわけではない。韓国へは行ったこともあるし、韓国人の知り合いもいるけれど、それとて数ある外国のうちの一つでしかない。なので、正直ピンとこないというのが第一印象だ。
 そういう社会的なテーマ性を抜きにして考えると、これは主人公の交友関係を綴った青春小説、あるいは父と息子の関係を綴った家族小説という骨格が透けてみえる。たぶんぼくに薦めてくれた人はそういう読み方をしたのだと思う。それなら理解できないこともない。冒頭に「これは僕の恋愛に関する物語だ」、なので「一切の『主義』は関わってこない」、という主人公の断り書きが出てくる。もちろんそれは作中の言葉であり、作者の韜晦であるのかもしれない。だがその言葉が正しいとしたら、登場人物がほとんど在日朝鮮人であっても、それは単なる舞台装置のひとつでしかないのであり、それ以上は深読みというものなのだろう。
 映画、音楽、小説、洪水のように流れていく数々のタイトル。青春の重要なピースなのだろうけれど、その大半はぼくのなじみのあるものではない。そもそも恋愛の物語というが、どこに恋がありどこに愛があるのかが皆目わからなかった。ただ、父親と息子の関係、その微妙な距離感と愛情はちょっと悪くないと思う。特に父親がなかなかいい味出している。前にも書いたようにぼくには経験のないことだけに、うらやましい気がしないでもない。ということで星をひとつサービスしておいた(笑)。

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