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2011年1月 8日 (土)

「神様からひと言」

★★★☆☆。
 ミステリかと思って読んだら全然違って、普通の小説だった。よくみると副題に「長編小説」とあった。それは見りゃわかるがな。その昔、講談社ノベルスの京極堂シリーズ「姑獲鳥の夏」が出たとき、背表紙の副題に「ミステリ・ルネッサンス」とあった。それが2作目では「超絶のミステリ」となり、3作目では「本格小説」と変化した。本格小説って何だ?とファンの話題になったものだ。4作目でそれがとうとう「小説」になった。わざわざ小説って書くかい、ミステリの枠を超えた作品という意味か、とこれも話題になった。次作は「説」か、とかみんな期待していたが、5作目からは副題が消滅した。小説を超えた作品になってしまったらしい。そんなことを思い出した。
 会社内や私生活のドタバタを面白おかしく綴っているサラリーマン小説。こういうのはどんな読者層が読むのだろうか。少なくともぼくの守備範囲からはまったくはずれている。数多ある本の中から何をどう選択して読むかは難しい問題だ。ぼくは狭く深く、気に入った作者が見つかると片っ端から全部読むという井戸掘り型で、井戸を掘り下げているうちはいいが、掘り尽くしてしまうと、次はどこを掘ろうかと地表で途方に暮れる。似たジャンルで書評で好評なものを探すというのが無難なチョイスになり、それでうまく行くこともあるがハズレのときもある。いずれにしてもなかなかふだんのフィールドからジャンプはできないもので、いきおい読む範囲が非常に偏っている。この本はさる人の推薦で貸してもらったもの。荻原浩という作家はかなり有名な人らしいのだが、まったく知らなかったし、自分からはまず手に取らないだろう。そういう点では貴重な経験だ。
 こういうユーモア小説を読んでのん気に笑える人は幸せな人だと思う。テレビのバラエティ番組で意図的に会場の笑い声を流すものが最近多い。場を盛り上げて視聴者をのせる手法のひとつなんだろう。でもその時の気分によっては、何がそんなにおかしいんだ無神経に、と気に障ることもある。ああいうのを見てうつ病の人とかは神経を逆なでされないのだろうか。
 この本も、読み始めは何がおかしいんだろうと思いながら読んでいた。ギャグが心にかすらない。字面はおもしろいのだが、心が笑えていない。面白くなりだしたのは、主人公の凉平がお客様相談室に飛ばされてからだ。これは何といっても篠崎のキャラだろう。がぜん物語が息を吹き返した感がある。これはフロスト警部そのものではないか。上司の本間はマレット警視で、凉平は手下の新任刑事。ぴったりはまっている。パロディかと思うほどやりとりがそっくりでおかしいくらいだ。ぐうたらでダメ社員に見えながら実は仕事はすばらしくデキるところも同じ。上司、権力や悪には楯突くが、部下にはやさしい。絶対にウィングフィールドのフロスト警部ものの影響を受けているに違いない。
 ぼくはフロスト警部心酔者なので、篠崎を中心とするお客様相談室ものの続編があったらぜひ読みたいが、物語は完結してしまったからな。すべてが収束する会社での大詰めのドタバタや凉平の結末など達者に書けていて力量のあるのはよくわかるが、この井戸をさらに掘ってみたいかは微妙。

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