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2011年1月20日 (木)

「DIVE !!」

★★★★☆。
 う~ん、惜しいな。絵に描いたようなスポ根もの。それぞれに個性的な3人の飛込み選手をそれぞれの視点で描きながらクライマックスのオリンピック代表決定戦へもっていく構成は申し分ない。飛込みというマイナーなスポーツに焦点をあてて、飽きさせずに文庫版上下2巻を読ませる筆力も敬服の至りだ。ともに主人公と言っていい要一、知季、飛沫の3人の少年、脇を固める大人たち、いずれもよく書けている。スワンダイブなんて身震いするほど見たいと思う。なのに、なんで満点星5個がつかないのか。だから惜しい。
 まずはいいだけほめたので、あとは気兼ねなく気に入らない点をあげよう。何といってもエンディング。小説の読後感を左右するのはこの結末部分だ。ここをおろそかにするといくら途中が素晴らしくても大きなイメージダウンになる。3人のほぼ等価な主人公の中から1人の代表選手を選出する選考会。どうやっても2人の敗者がでてしまう。このへんは駅伝の「風が強く吹いている」や、リレーの「>一瞬の風になれ」との違いで、個人種目の厳しさだからもちろんそれはしかたない。勝者、敗者それぞれに納得のいく結末を与えてくれれば、ああよかったんだなと安心できる。2人まではいいとして、ぼくが一番感情移入していたメインキャラのあのおちゃらけておじょくってるとしか思えないエンディングシーンはなんなんだ。スポーツに限ったことではないが、ストイックなまでの懸命な努力が必ずしも報われるとは限らない。それは人生の常だ。ぼくはだからこそ小説の中でくらい努力が実を結ぶ話が読みたい、読んで頑張る元気をもらいたい、と思う。けれど、挫折の美学というのもあるし、精一杯やってだめだったとしても全力を尽くしたのだからしかたがない、よくやったよと思える結末ならば、納得できる。だが、これはだめ。あれだけ栄光をかなぐり捨ててまでドロドロになって頑張った報酬があれかよ。ほんと作者の品性を疑ってしまう。スポーツやったことあるの、頑張ったことあるのと訊いてみたい。
 あとの2人のサイドストーリーにしてもそれぞれ文句はあるのだけれど、不快になるのでもうやめておこう。こういう本筋とは直接は関わらない部分の、読み手の心を苛だたせる無神経さも大きな減点要因になっている。誰か小説のなんたるかを熟知している達者な書き手に手を入れてもらったら、すばらしい作品になっただろうに。惜しい。

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