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2011年2月 3日 (木)

「13階段」

★★★★☆。
 偶然だけど、これも死刑執行直前の真犯人捜しというサスペンス。冤罪で極刑を言い渡された被告人を謎の依頼人が私財をなげうって真相究明して救おうという話なのだが、その依頼を受けた元刑務官の南郷とその助手を務める前科者三上が調査を始めてみると、思いもよらない事実が浮かび上がり、あっ!という結末に至る。江戸川乱歩賞受賞作ということなので、こういう筋書きだったのかよ、というミステリとしての意外性も十分。
 まあ、依頼人の真相解明の動機はそこまでするかとちょっと無理があるし、真犯人が都合よく居合わせるというのもできすぎているし、同じ土地で過去のできごとが重なる暗合がかなり不自然だとは思う。だけど、この作品の主題は題名に象徴される合法的報復手段としての死刑制度と、その対極にある人による超法的報復との対比だろう。そういう意味では、肝心の冤罪死刑囚は単なる脇役であって、主人公は獅子奮迅の活躍をする南郷と三上だ。特に、自らの手で2人の死刑囚を処刑した過去に疑問をもつ南郷の冤罪を晴らそう、受刑者の更生に助力しようという、強い意志が物語の中心になっている。その生き方、根源的な問いがよく伝わってくるし理解できるので、一体感をもって読み進められるところがこの作品の魅力であり強みだと思う。
 結果的に、法によらず人の手で人を裁くという結末になっているのは、賛否分かれるところかもしれない。ぼくはすべて収まるように収まったこの結末は気に入っている。ただひとつ、南郷のささやかな夢だったサウス・ウインド・ベーカリーが実現しなかったのは残念だけど。

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