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2011年2月17日 (木)

「告白」

★★★☆☆。
 恐るべきジコチュー小説。題名にある告白というよりは独白といったほうが正確だろう。事件関係者それぞれの6つのモノローグで全体が構成されている。つくりとしては悪くないと思うし、最初の教師森口悠子の章の改行が少なく畳みかけるような筆の進め方は、衝撃的な内容とあいまって非常に印象的だ。ぐいぐい引き込まれる。
 ただ、最初だけ。読み進むにつれだんだん暗~い気持ちになる。幼い娘を中学生AとBの2人に殺された森口がその復讐をするという筋書きも心温まるものではないけれど、それより何より気色悪いのは、登場人物それぞれが全く自分のことしか考えていないことだ。他人の立場に立って思いやるとかそういう心づかいが皆無。それぞれがてんでんばらばらに自分の世界を独白している。しかもそれが被害者である森口と殺された娘、加害者である少年Aとそれを捨てた母、少年Bとそれを溺愛する母の3組のいずれも母と子だ。これはもう異常としかいえない。
 ねじまがった家族愛。その中だけで完結していて、外界と隔絶している。そしてやることなすことが陰湿だ。女子供なんていう軽薄なくくり方は嫌いだけど、全体がそういうイメージで統一されている。全編を通じて父親を代表とする大人の男の存在感がまるで希薄なせいだろう。誤解を恐れずにいえば、女はこわい~という女性的小説だと思う。
 帯には「衝撃的なラスト」なんてあるけれど、いっそ関係者全部集めて爆死させてしまいたいとぼくは思った。それくらい気色悪い。好き嫌いは別として、そういうものすべてひっくるめた強い印象を与えるのが創作者の技量だというなら、たしかに小説の力なのかもしれない。それで本屋大賞なのか。でも技巧的にいかにすぐれていようと読後感の悪い作品をぼくは評価しない。

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