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2011年3月23日 (水)

「アヒルと鴨のコインロッカー」

★★★★☆。
 伊坂幸太郎も7冊目になると、その特有のスタイルにもどっぷりなじんで安心感がある。ぼくはこの文体、表現、テンポ、場面転換、登場人物像、結末のつけ方などなどがとても好みに合っているので、心地よく読める。裏を返すとだんだん意外性が乏しくなるということもいえるのかな。これだってけっして悪い作品ではないのに評価上は損をしているな。難しいものだ。
 まずこのタイトルがちょっとねなどと難癖を。アヒルと鴨の比喩は何度かでてくるのでわからないでもないけれど、コインロッカーをそこへ並べるか。英題が「A COIN LOCKER」だし。この作者、英題をつけるのが好きなようで、前作の「A PRAYER」とか「A LIFE」とかは気が効いていると思ったけれど。
 物語は僕こと大学新入生の椎名が主人公の現在と、琴美、ドルジ、河崎の3人が中心の2年前のできごとが交互に語られてゆく。単なる2層構造なので「ラッシュライフ」よりは単純で見通しがよい。現在の話にも河崎やドルジらしき人物があらわれるので、どこかでこの時を隔てた二つの物語がひとつに収束するのだろうとは予想がつく。そして、それはその通りなのだけれど、そこにちょっとしたどんでん返しが用意されていて、アッということになる。確かにその点は他の作品よりはミステリらしいかも。2年前に起こった事件やその結末はあまり気分のいいものではないし、その後始末を引きずっている現在のエンディングにしても、当然の報いだとは思うけれど、ちょっとスッキリしない。「桜」がズドンの明快さには負けるんだよな。
 そうそう、椎名の叔母さんがあの祥子さんで響野の名前もちらっと出てくるところは、響野ファンのぼくにはポイント高かったりして。それと、忘れてならないのは、文章の構造的な工夫というかたくらみだ。交互に出てくる「現在」と「二年前」の書きだしと書き終わりがきれいに文の作りを揃えてある。まるで韻を踏んでいるかのようだ。気づいて思わずにんまり。ぼくはこういうの大好きで、実はこのブログのあるエントリにも二重折句がかくされているというのは秘密(笑)。

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