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2011年3月16日 (水)

「夕映え」

★★★★☆。
 地震関連で書くことが増えて本の感想がたまってしまったので、少しずつ。久々の宇江佐真理はちょっとこれまでとは違った歴史小説的なおもむき。ただ、それが成功しているかどうかは微妙な気がする。
 幕末から維新にかけての江戸~東京を舞台に、息子が幕軍に投じたためにごくふつうの一家が歴史の波に翻弄される様子を描く。これまでの江戸の町内ものではなく、歴史的な転換点の物語だけに史実描写がかなり多い。ただ、時代背景が数多書かれ尽くしている幕末維新なために、あちこちで何度も読まされた内容が繰り返されるのは正直退屈だ。物語の柱として重要な要素なのはわかるけれど、もう少しはしょってもいいのでは。
 あとは基本的にいつもの下町人情物で、それなりに楽しめる。上下2巻で長そうに見えるけれど、1冊が薄いのでボリュームとしては厚い本1冊分ていど。ならず者から志願して幕軍に加わった良助に対するあまりの親馬鹿が鼻につかないでもないけれど、まあいつの時代も親というのはそういうものではあるからな。終幕近く、松前の浜で弘蔵とおあきが見た夕映えのシーンは白眉だろう。動乱の時代を生きた庶民の心情がここに集約されている。帯にある児玉清の賛辞はほめ過ぎにしても、それでこのタイトルかと納得させるには十分だ、ということで★ひとつおまけしておこう(笑)。

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