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2011年5月20日 (金)

「グレイヴディッガー」

★★★★★。
 骨髄ドナーとしての適合患者への移植手術目前にして殺人事件に巻き込まれ、よんどころない事情から警察に捕まるわけにはいかず、捜査の手を逃げ回りながらなんとか骨髄採取する病院へたどりつかねばならない。そのうえ、なぜか自分をつけねらう別の一団がいて警察とは別に追手をかけられる。コースは東京都北区赤羽から大田区六郷土手までの都内縦断。電車に乗ればほぼ一直線だが、そうはいかずに紆余曲折しながら絶体絶命のスリルあふれる逃走劇が本書の主題だ。
 逃走劇そのものは、捕まりそうになっては辛くも逃げるという胃の痛くなるようなぎりぎりの攻防の連続で、そのスピード感あふれるサスペンス性だけでも十分楽しめるが、事情を複雑にするような中世の怪奇伝説を模した奇怪な連続殺人とか、逃亡者の骨髄を独自に狙う宗教集団とそれをさらにつけねらう謎の墓掘人(グレイヴディッガー)の存在とか、はたまた警察内部の刑事部と公安部の軋轢とか、とにかくめちゃくちゃに錯綜した背景が話を複雑にしている。誰と誰が味方なのか敵なのか落ち着いて考えないとわからなくなる。このへん、こんなにてんこ盛りにしないでもう少し整理して分かりやすくした方がよかったのではと思わないでもない。だけど、登場人物がみんな意外性を持った役回りで活躍し最後の結末へ収束してゆく力技はすごい。あまりにもつくりものめいた設定といえばそれまでだけど、これはこれでエンターテインメントとしては一級品だと思う。
 エンディングもめでたしめでたしに近いので読後感も悪くない。ただ、大森南診療所での墓掘人の最期があまりに惜しい。なんで意を遂げさせてやらなかったのだろう。あとひとつ細かいことだけど、ドナー登録は満55歳までの年齢制限があるので58歳の被害者はありえない。ぼくも一昨年登録解除されたので(笑)。

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