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2011年5月25日 (水)

「変身」

★★★★☆。
 ほんとうに東野圭吾という作家は達者だなと思う。あれだけの数の作品とそのバラエティの豊富さには感心する。ぼくが読んだのはそのごく一部だが、まずは水準作かそれ以上。大したものだ。
 これはなんというジャンルなのかな。サスペンスだろうか。事故で失った脳の一部に他人の脳を移植された主人公成瀬純一が、徐々に移植脳の性格に取って代わられてもとの自己を失っていくという恐ろしいストーリーだ。科学的にこういう移植が可能だとは思えないし、仮に大多数の神経細胞間の接続がうまくいって機能的に元の脳と移植脳が齟齬なく働けるようになったとして、性格のような微妙な部分で脳同士のせめぎあいみたいなことが起こるものかどうか。そうかSFなのか。
 成瀬が有無を言わせずこういう実験材料として選ばれたというのは、そうしなければ命が助からなかったという前提があるにせよ、個人の尊厳をあまりに無視したやり方なのはもちろんだ。人間的な生き方、どんなささやかなものであっても、その人にはその人の生活があり、周囲の人とのかかわりがある。その象徴が純一の恋人葉村恵だろう。その一途な献身こそが、成瀬が成瀬の脳で考えて決めた最後の最後の結末の大きな要因となっている。愛は勝つ、まさにこれは薄倖な恋人たちへの神の祝福の物語でもある。しかしそれがおのれの命と引換えでしか実現できなかったところがとてつもなく悲しい。
 今日のランニング。8.4 km/49 min。今月の累計距離 214.7 km。

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