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2011年6月 2日 (木)

「魔王」

★★★★☆。
 感想文が書きにくい作品だ。これは何が主題なんだろうか。ふだんミステリのような枠組みがわかりやすいものばかり読んでいるので、読み終わっていったい何だったんだろうと思うようなものを読むと何だか落ち着かない。確かに伊坂幸太郎はそういう側面があって、「オーデュボンの祈り」にしても「ラッシュライフ」にしても、一本筋が通ったという感じではない。読んでいて著者独自の世界を楽しむというか、それでまあいいのだけれど。
 超能力ものには違いない。相手に向かって念じると思っていることをしゃべらせることができる兄と賭けごとに絶対負けない弟。その能力をどう使ったかというと、なんと政治をよくするため世界をよくするため、というところがおかしい。そこに著者のメッセージがあるのかなあ。それほど政治的な人とは思えないからユートピア志向とでもいうべきだろうか。まあ登場人物の性格とか会話は、まるっきり伊坂世界なので安心しては読める。そう深く考える必要はないのだろう。
 といいつつ、2作目の最後の部分にすこぶる感動する。「兄貴は負けなかった。逃げなかった。だから、俺も負けたくないんだよ。馬鹿でかい規模の洪水が起きた時、俺はそれでも、水に流されないで、立ち尽くす一本の木になりたいんだよ」。やっぱり似たもの兄弟なんだな、「重力ピエロ」だな。ああ、こういうメッセージなのか。1人1人が変われば世界は変わるみたいな、と妙に納得。

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