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2011年7月 5日 (火)

「砂漠」

★★★★★。
 英題がcampus life。北村、西嶋、東堂、南、鳥井と仙台の大学生5人のキャスト。彼らが織りなす学生生活、春夏秋冬、青春、友情、恋愛、ゲーム、超能力、正義感、政治、社会、事件とまあいろいろぎっしり詰め込まれて楽しめる。当然のことながら、文体、会話、軽妙なやりとり、言葉の綾、すべてが伊坂幸太郎ワールドだ。その世界にどっぷり漬かってふわふわと読み終えてしまっても軽く★4個くらいはつくところだ。
 しかし、これは何と言っても西嶋の小説だろう。この強烈なキャラクターの前にはすべてが霞んでしまっている。随所に語られる西嶋語録の代表的なものは、解説で吉田伸子が集めているのでそれを見てもらいたい。誰しも同じ感想をもつものだと思う。「その気になればね、砂漠に雪を降らせることだって、余裕でできるんですよ」。心の奥底から勇気がもう一度ふつふつと湧きあがってくる。使い古された言い回しだけど、「やる気があればきっと夢がかなうなどということはない、だけどやらなければ絶対夢はかなわない」。麻雀でいくら平和役を上がったって世界が平和になるわけではない。それはその通りだ。馬鹿馬鹿しい。だけど、そう言いながら自らは何もしない人々に西嶋を笑う資格はない。
 そして数々の迷語録だけではないところが西嶋のすごさだ。ビルの灯りでつくった「中」の字、新調のスーツに身を固めて乗り込んだクリスマスイブのキャバクラ。たった一人の友のため、たった一人の恋人のため。これに心を動かされないで、感動しないで、人生を生きる意味があるか、ぼくはそう思う。

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