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2011年7月19日 (火)

「賢者はベンチで思索する」

★★★★☆。
 よくある安楽椅子探偵ものというか、日常生活のちょっとした不思議を合理的に解き明かす蓋然性推理ものというか。内容的には犯罪ともいえないようなできごとに対して、意外な真相(あるいはそう考えられるもの)を導いてなるほどとうならせるというわけだが、たいていの作品では何だよこんなものというか、真相導出に必然性がなくて感心しないものが多い。
 そういってしまえばこれもその類例に過ぎないのだけれど、近藤史恵が書くとやはりうまい。このあたりですでにぼくの先入観がはいってるか(笑)。主人公というか語り手が専門学校を出たものの思うような就職先に恵まれずファミレスでバイトしている七瀬久里子、それに探偵役がそのファミレスでいつも同じ席でコーヒー一杯でねばっている正体不明の怪しげな国枝という老人という配役だ。この2人の会話というか関係がほのぼのとしていて心が温まる。人間があたたかく書けているところが類作との違いだろう。そこがこの著者の魅力だ。「そう、悪いことより、いいことの方がたくさん起こる。それに、こう考えておきなさい。いいことが起こっても、次に悪いことが起こるとは限らない。反対に悪いことが起これば、その次にはいいことが起こるんだ、とね」。まさに人生の要諦だ。
 100ページほどの短篇が3話。最初に書いたように事件自体は他愛のないもので、ストーリーをどうこういうものではない。最後に国枝老人の正体が明らかになってあれれという意外な結末になるのが、唯一のミステリらしきところか。ああ、でもこれでもう国枝さんには会えないのか、と久里子と一緒になってがっかりする。ところがところがちゃんと続編があるのだからうれしくなってしまう。ぜひそっちも読まなくてはね。

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