« ガリバーくん | トップページ | 復活 »

2011年7月11日 (月)

「噂」

★★★★☆。
 限りなく満点に近い星4個。ぼくの買ったのには帯がなかったけど、元々の帯には「衝撃のラスト一行に瞠目!」とある。付け足しのようなラスト部分をふむふむと読んでいって最後の一行に到達し、ん?これは...、と一瞬考えて、おりゃ!となる。たしかに。どんでん返しというほどすべてがひっくり返るわけではないけれど、平和な生活が粉砕されるようなインパクトはある。なんで?という感じ。これは賛否両論あるだろうね。ぼくははっきり蛇足だと思ったので涙を飲んで減点。
 殺されて足首を切り取られた少女の遺体が次々に発見という連続猟奇殺人事件に、小暮と名島の絶妙刑事コンビが挑むという筋書き。本筋である事件や捜査の進展もテンポよく読ませるが、ぼくは妻を亡くした小暮と1人娘の女子高生菜摘のほほえましい日常風景が好きだ。事件が起こるとほとんど家に帰れない小暮が、一緒に食べる約束だったすき焼きがきちんと用意されていたのを、夜更けに帰ってきてひとり食べるシーン。はたまた小暮ががんばって菜摘に海苔弁をつくるシーン。すれ違っていても心が通い合っている父娘の情愛に泣ける。世代のギャップを感じさせながら友達同士みたいな2人の会話がまたおかしい。
 もうひとつ、小暮と一回り若い本庁女性警部補である名島の名コンビもいい。組んだ最初はギクシャクしていたのが行動を共にするにつれ息があってゆき、最後は見事に事件を解決に導く。ともに連れ合いを亡くした2人がなかなかいい雰囲気になって、最後にはこの先どうなるんだろうと下世話な興味をかきたてられたところで物語は終わるのが残念(笑)。
 ミステリとしてのできもまあまあだし、こういった周辺の人間模様も好ましくまずまずの秀作といえるだろう。小暮、菜摘、名島はいうに及ばず、渋谷で遊び歩いている女のコ達にいたるまで、登場人物への著者の温かい目線がそそがれている。あーそうだ、これは宮部みゆき的人情世界だ。なのでどっぷり安心。だからこそ最後の1行はぶちこわしなんだよな。たぶん単なるミステリ水準作ではなくその上をいく一ひねりを加えたかったのだろう。技術的にはうまいとは思うけど、なんだかなあとやっぱり思うよ。
 それから、3人目に登場する犠牲者の犯行時間に関する違和感。これが緻密に仕掛けられた叙述トリックになっていることをぼくは文庫解説とwebのネタバレ書き込みを読むまで気づかなかった。一見正統派のミステリと見えながら、ラストだけでなくこういう仕掛けが仕組まれているとは。読んでいて自力で発見した人はあっと驚いて最高点をつけるんだろうな。ただ、自然すぎるというか、もう少しヒントをくれてもいいんじゃないかなあ。普通はちょっと気づかないと思うけど。

« ガリバーくん | トップページ | 復活 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

CLICK !

  • おもしろ有機化学ワールド



twitter

2024年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ