« 加賀谷はつみ「君がいる」 | トップページ | 信号場制覇 »

2011年9月 7日 (水)

「フィッシュストーリー」

★★★★☆。
 伊坂幸太郎は何冊目になるだろうか。これだけ読んでくるとああこういうものなんだなと、伊坂ワールドというべき世界がなじみ深く感じられる。黒澤のようなあちこちに登場する人物が複数の作品世界の一体感を醸しだしているというのもあるし、そうでなくても登場人物の思考、行動や会話あるいは地の文すらが類型的で似ているからだ。それがマイナスに働けばマンネリ単調でどれ読んでも同じとなりかねないが、そこは作者の腕でどの作品もそこそこ読ませてくれる。まあ好き嫌いがあるのかもしれないば、好きな人はどんどん読み進むけど嫌いな人は二度と手に取らないみたいな。
 この短編集に収録されている4作のうち、まずは表題作「フィッシュストーリー」。時間を前後させて、あああれはこうだったんだとあとで腑に落ちさせる手法は「ラッシュライフ」と同じ。さすがにこういうのはうまい。ぼくは個人的に瀬川さんが「砂漠」の西嶋に重なってうれしくてしようがない。最後の「ポテチ」もいい。実は重い題材なんだけどポテトチップスの味つけにことよせて軽く扱ってしまう。
 ひとつ不満をいえば、彼の後期作品に色濃くなっている人間の生き方に対するメッセージ性の希薄さだろうか。うまくいえないけれど、件の西嶋とか「魔王」とかね。単に軽妙で心地よい会話とテンポだけでない、思想性みたいなものが織り込まれているのが伊坂幸太郎の大きな魅力だと思うんだよね。

« 加賀谷はつみ「君がいる」 | トップページ | 信号場制覇 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

CLICK !

  • おもしろ有機化学ワールド



twitter

2024年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ