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2011年9月25日 (日)

「ジェノサイド」

★★★★★。
 ハイズマン・レポートの人類絶滅要因によれば、1.宇宙規模の災害、2.地球規模の環境変動、3.核戦争、4.疫病:ウイルスの脅威及び生物兵器、5.人類の進化、だそうだ。
 この小説では実際にこのうちの一つがアフリカ中央部の紛争地帯で起こり、それを封じ込めようというアメリカ政府とそれに敵対する男たちの息詰まる攻防戦が繰り広げられる。進化の頂点として君臨する人類が絶滅するなどということはふだんは意識されていないけれど、客観的に考えれば歴史の必然のひとつとして何が起こってもおかしくない。それにあらがうことがはたしてできるのかどうか。その答はこの小説の最後にも明らかにされていない。予測不可能だからだろう。
 未来は予測不可能であるにしても、現在の地球上のことであれば不可能なことはない。我々には一見不可能に見えても、圧倒的な知性をもつ生物にとっては。GIFTという名のソフトウェアがある。遺伝子配列がわかりさえすればそれがコードする受容体タンパク質の立体構造が最適化され、その活性中心に結合する低分子リガンドの構造まで導きだしてくれるという夢のようなツールだ。受容体タンパク質がわかっても、その機能すなわちそれを活性化するリガンドがわからないオーファンレセプターは数多い。遺伝子とタンパク質は1対1で特定できてもそれにフィットするリガンド探しは非常な難問だからだ。こんなソフトがあれば、ドラッグデザインは終わったも同然。特に、遺伝子変異による遺伝病の治療に大きな威力を発揮するだろう。
 もちろん現在の人知でこんなソフトはつくれないが、次世代の進化した人類ならつくれるかもしれない。それが人類にとっての福音になるかあるいは脅威になるかは、次世代人類と現人類が友好的に共存できるかどうかにかかっている。ぼくは何を夢のようなことを書いているのだろう。が、これがこの途方もない物語の主題でもある。とても片言隻句で要約できるようなものではない。圧倒的な構想力のストーリーと迫力ある描写。今年前半の話題をさらっても不思議ではない。
 といっても単なるSFで終わっているのでははなく、この物語がとても人間臭いぼくらの目線で読むことができるのは、いくらGIFTが優れ物であっても最適化されたリガンド分子を作りだすには、人の手による有機合成が必須だからだろう。実際、大学院生の古賀研人が隠れ家で寝る間も惜しんで合成作業に没頭するくだりはとても共感できる。頑張れ頑張れと応援してしまう。ツイッターの化学クラスタで高い評価を得ているのもこのあたりに原因があると思う。
 最後の圧倒的なハッピーエンドはできすぎで白々しいほどだけど、まあいいよね。いいと思うよ。
 今日のランニング。26.5 km/174 min。今月の累計距離 154.3 km。

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