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2011年12月20日 (火)

「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」

★★★★☆。
 うん、まあ島田センセイにしては他愛ない手すさびではあろうけれど、これはこれでおもしろく仕上がっている。どんなものを書かせてもそれなりに読ませてしまう手腕はまったくすごい。
 イギリスはロンドンのベーカー街221Bという住所はミステリファンなら誰でも覚えている。世界一有名な住所のひとつではなかろうか。ぼくがシャーロック・ホームズを初めて読んだのは小学生のときで、少年少女向けに訳出されたたしか20巻本を全部もっていた。その後、何度かいろいろな版で読み直し、パロディやら評論やらもずいぶん読んだ。今も30年以上も前に出たパシフィカ版全集が手元にある。
 そのホームズをイギリス留学中の夏目漱石が訪れて事件に巻き込まれるというまた奇想天外な設定だ。謹厳実直そうな漱石が意外やユーモラスなところがまずはおかしい。その漱石の視点とワトソンの視点で交互に物語が綴られてゆくのだが、奇人ホームズの立ち居振る舞いが両者の視点を通すと全然別のものに見えてしまうところもおもしろい。
 事件はある青年が一夜にしてミイラに変じてしまうという不可解なもので、最後はホームズがトリックをあばくという、いつものホームズ譚のような結末になっている。トリック自体はまあまあだし、他のホームズ物と比べても遜色ないと思う。だけどやはり読みどころは古き良き時代を彷彿させる漱石、ホームズ、ワトソンの掛け合いだろうな。ユーモア小説としても十分楽しめる。
 ただ、年少読者にも読みやすい「総ルビ版」というのが煩瑣で最後まで読みにくかった。電子ブックならルビを出したり消したり自由?にできていいなとちょっと思った。

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