「ジーヴズの事件簿-才智縦横の巻-」
★★★★☆。
イギリスのユーモア小説といえば「ボートの三人男」だと思っていたら、こいつはまたなかなかのものだ。有閑階級の若い男が執事というか従僕を連れて歩くなんて、そんな時代もあったのかという感じだが、1900年代初頭だからもう100年近くも昔の作品なのだ。だから内容はもちろん古い。けれど人間のやることなど100年前だって今だって変わらないから、同じようにおもしろく読める。それが長寿作品たる所以だろう。
バーティことバートラム・ウースターという若い男が、いろいろな厄介事に巻き込まれ、あるいは作りだし、それを従僕のジーヴズの機知で切り抜ける、という連作もの。抜けている主人としっかり者の従者というのは古今よくある組み合わせなのだけれど、巻き起こるドタバタ騒ぎとその見事な始末がおもしろおかしく綴られていて、気楽に読める。ろくすっぽ働きもしないで仕送りで遊んで暮らし、面倒なことが起きたら従僕が全部解決してくれる、というのはおそるべきうらやましい境遇ではある。が、ジーヴズには頭が上がらない。従僕といいながらジーヴズの方がずっと頭も優れているし、存在感もあるので当然だ。まさに主客転倒というあたりは、ちょっと「謎解きはディナーのあとで」を思わせておかしい。
これは年末に店頭で見かけて買っておいたものだ。まだまだこんな知られざる本が埋もれているのだから本屋巡りはやめられない。このあと続編が刊行されているので楽しみだ。
今日のランニング。13.0 km/96 min。今月の累計距離 132.9 km。