「わらの女」
★★★★★。
これはもう古典的名著。だけど恥ずかしながら映画も観てないし読むのもはじめて。さすがに読んでみて感心した。ひどく単純なストーリーで登場人物も限られるし、何か事件が起こるとしたらそれしかないということが実際に起こる。そういう意味では何の奇もてらいもない。あまりに直線的だ。だけど、ぐいぐい引き込まれる。うまいなあと心底思う。
後半のマエナーとケインのやりとり。供述することすべてが、しゃべればしゃべるほど深い穴に落ちていく。すべてが計算しつくされ、完璧に仕組まれていたら、もう逃れるすべはない。蜘蛛の糸にからめとられた羽虫のように。おそろしい物語だ。解説にあるような法律的な問題点は確かにありそうだけど、これだけ圧倒的な筆力で描き切られればそんなことは瑣末事に思えてしまう。
こういう浅はかといってしまえばそれまでだけど、女性心理描写のうまさ。そしてこの冷酷無比な陥穽の構築。なるほど著者は女性なんだ。う~む。
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