無駄合問題
詰将棋パラダイス9月号感想記事をまだ書いていないけれど、何やらTwitterで9月号結果稿がらみの問題が提起されていたので、そっちを取り上げてみたい。
問題は、9月号で結果発表されている6月号掲載のC級順位戦1番則内誠一郎氏の作品(左図)。これは47金以下の15手詰なのだが、途中からの変化手順で13手目に右図の局面が現れる。これは44にいた飛を43飛成と開き王手した局面だ。玉の逃げ道は一つしかないので65玉と逃げると63龍と飛車をとって詰み、すなわち15手飛余りの詰みとなる。作意順は15手駒余りなしだから、この順は同手数だけど飛車が余るので変化手順ということになる。
ところが、右図で44歩と合駒をするとどうなるか。馬の効きで王手がかかっている局面だから44同馬と取って65玉63龍で詰む。これだと17手かかるけれど、先ほどの飛車のほかに合駒の歩も余分に余ることになる。すなわち44歩合は手数を延ばすだけで意味のない合駒であり、無駄合なのでこの手順は無効である。
これで終わればなんの問題もないのだが、44歩合は馬の効きを遮断すると同時に43龍の効きも遮断できるので、同馬と取ったときに46玉と逃げる筋が発生する。そうなると35馬55玉46馬66玉75馬で21手もかかってしまう。そこで44歩合には同龍ととって66玉55龍まで17手歩余りの詰みが最短になる。これだと2手延びて合駒の歩が余るだけなので44歩合は無駄合だという解釈が可能だ。
いやそうだろうか。44歩合をしない順では15手飛車余りで詰んだ。もし44歩合が無駄合ならば17手で飛車と歩が余る順でないとおかしい。それは上記の44歩合同馬65玉63龍の順だ。しかし、44同馬には46玉と逃げるとより長手数かかるのでそちらが正手順となる。それを避けるために44同龍とするのは新たに66に逃げ道が発生するうえに63龍を取って飛車余りになる手順がなくなってしまうので、そもそも別手順と見なすべきだろう。つまり44歩合は無駄合にはならず有効な合駒ということになる。
すなわち右図の局面は65玉に63龍までの1手飛余りではなく、44歩合に同龍66玉65龍までの3手歩余りが正しい詰手順だろう。となるとこの変化手順は17手歩余りとなって作意順より2手長い変長(変化長手数)ということになる。9月号の誌面ではあいまいな表現だったが、その後詰パラのHPでこの作品は変長があるために不完全作と認定し、入選取消と順位戦降級の取り扱いに修正すると告知された。
このように後追いで取り扱いが変更されたりしたのでTwitterで論議をよんだわけだが、無駄合かどうかは微妙なところもあるし、仮に変長だったとしても、変長を不完全とするかどうかもまた意見の分かれるところだろう。実際、ぼくがこの作品を解いたときもここで引っかかって、合駒して変長じゃないのかな、でも作品が掲載されているところをみると、これは無駄合という判断なのかなとちょっと考えさせられたものだ。ちょっと釈然としないので作品の評価を1段階下げた。ぼくが気がつくくらいだから大方の解答者は気がついていて、まあ小キズではあるけれど作意順はすばらしいからと不問にした人もいるだろうし、ぼくと同じに気になって評価を下げた人もいるだろう。つまり、解答評価の段階でこの問題も加味されているとすれば、ことさら不完全作としないで現評価のままでいいような気がするが。そもそも作者の則内氏はベテランなのでこの問題を当然認識しているはずで、そのうえで出題されたということは、キズではあるが出来には自信があるということじゃないのかな。
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