大長考
将棋の公式戦のライブ中継を無料で見られるとはいい時代になったものだ。今日は、A級順位戦羽生善治九段対豊島将之竜王という好カードがあって、エアロバイクを漕ぎながらAbemaTVの中継を見ていた。
局面は横歩取りの中盤戦で、後手番の豊島竜王が46手目をこんこんと考えている。漕いでも漕いでも進まない。バイクがじゃなくて将棋がだ。終盤にさしかかる勝負所であり、持時間の長い順位戦だからそれほど手が進むとは思っていないが、それにしても手が止まったきりだ。とうとう漕いでいる間1手も進まなかった。考慮時間は2時間をゆうに超えていた。大長考といっていいだろう。
いったい何を考えているのだろう。などと凡人が推し量っても意味はないか。ほんとかどうか知らないが、プロ棋士は何千手だか何万手だか読むそうだ。指し手に対し相手がどう応じるかによって、局面はどんどん分岐していくから、キリがないのはわかる。だけど、いくら持時間が長いとはいえ、6時間という制限のあるうちの2時間以上を1手にかけるというのはバランス的にどうなんだろう。しかも、何時間あろうともすべてを読みつくすことは不可能だとすれば、相手が予想外の手を指したらまた一から考え直さねばならないのではないか。ある程度方針を定めておいて、あとは相手の出方によってそのつど考えた方が効率的な気がするけど。
そういえば、昔の詰将棋パラダイスに吉村達也氏の随筆が連載されていて、その中で将棋の考慮時間についておもしろいことが載っていた。コンピュータ将棋に勝つ方法として、森下卓九段が、考慮に盤駒を使用し、1手3時間以上の考慮時間をかけて、途中風呂にはいったり寝たり休憩が自由にとれるという条件なら、まず絶対に負けないと豪語していたそうだ。いかにも長考派の森下九段らしいが、この条件ならたいていのプロ棋士は負けないだろうという(詰将棋パラダイス2009年12月号p.32)。
なるほど、1手2時間なんて全然足りないということなのか。もちろん10年前とはいえ、疲れを知らないコンピュータも1手3時間ずつ延々と考えたら人間が敵うのか、という気もするが(笑)。
« 大人の鉛筆 | トップページ | 一般化学の教科書 »
「ゲーム」カテゴリの記事
- 詰将棋パラダイス2024.8月号(2024.08.16)
- パズル通信ニコリ187号(2024.07.22)
- 詰将棋パラダイス2024.7月号(2024.07.17)
- 詰将棋パラダイス2024.6月号(2024.06.15)
- 詰将棋パラダイス2024.5月号(2024.05.13)
« 大人の鉛筆 | トップページ | 一般化学の教科書 »
コメント