歴代最低の首相
といっても、最近のあの人のことでも、その次のあの人のことでもない。第26代内閣総理大臣を務めた田中義一(在任期間1927.4.20-1929.7.2)のことだ。そう評しているのは舌鋒鋭い松本清張で、労作「昭和史発掘」の文春文庫版第2巻p. 198に、「歴代の首相中最低の評判をとった」と書かれている。読んでいて思わず笑ってしまった。いつの時代にも最低の首相がいるもんなんだな。
田中義一は陸軍機密費と目される裏金を使って総理大臣になり、張作霖事件の天皇への説明が不十分だと不興を買ったことを苦にして辞任、ほどなく病死(自死ともいわれる)している。おらが、おらが、と言ったことから、おらが宰相と呼ばれているように、お人よしで素朴な人柄だったが、軍人上りで政治には素人で、こと首相としては無能だったというもっぱらの評価だ。人柄も大事だけど、特に有事にはいかんなく能力を発揮してくれないと総理大臣は務まらないだろう。昭和初期のきなくさい時期もそうだけど、現在だってまさにそうだ。
年末年始から読み始めた「昭和史発掘」。田中義一の首相就任から退陣あたりは劈頭の1,2巻に書かれている。各巻の書評はそのうちブクログに書くつもりだが、松本清張の筆にかかると授業では無味乾燥だった歴史がこんなにも生き生きとおもしろい。彼がもし今生きていたら、現代の宰相についてどんなことを語るだろうか。
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