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2021年9月26日 (日)

「透明駒入門」

 前エントリ「透明駒とは何か」に続いて、新刊「透明駒入門」の紹介を。感想はもちろんぼくのごく個人的なものであり、一般化しうる保証はない。まずは内容説明から。

「透明駒入門」(Paradise Books 16)
  高坂研責任編集
  2021年9月1日発行
  発行 JCPS(日本チェスプロブレム協会)
  本体価格 1500円
  A5判横書き18字×37行の2段組、120頁

内容
扉 1頁
まえがき 2頁
透明駒ルール 9頁
解説編(扉含め54頁)
 詰将棋編:解説 6頁(例題8題)、練習問題 2頁(7問)
 協力詰編:解説 11頁(例題18題)、練習問題 2頁(9問)
 フェアリー(*)編:解説 22頁(例題25題)、練習問題 3頁(18問)
 レトロ編:解説 5頁(例題5題)、練習問題 2頁(8問)
解答編(扉含め40頁)
 詰将棋編:6頁、協力詰編:6頁、フェアリー編:18頁、レトロ編:8頁
フェアリールールの定義 13頁
作者名索引 1頁
計 120頁
*安南、キルケ、対面、背面、マドラシ、天竺、点鏡、強欲、禁欲

以下、とりとめのない感想:

 A5判120頁で1500円はちょっと高い気もするが、内容の特殊性と何より密度の濃さを考慮するとけっして高くはない。もとよりパラパラと読んでしまえる本ではなく、かなり考えながら時間をかけて読まなければならないので、時間当たりでいくとお得価格といえるかもしれない。実はぼくもまだ全部は読めていない、というかすべてをすらすら理解して読める人がどれくらいいるか...。

 内容だが、まず問題は本書がタイトルにあるような入門書であるかどうかだ。全120頁のうち、透明駒の基本的ルールと透明駒を用いた詰将棋の解説は、解答編も入れてたったの23頁しかない。協力詰まで含めても42頁だ。残りの大半はさまざまな独自ルールによるフェアリー作品に充てられている。透明駒自体がかなり理解しにくいものなのに、それを使ったフェアリー詰将棋となるとさらにハードルが高い。もともとフェアリーになじみのない人には難しく、まずフェアリールールに慣れていないと歯が立たないだろう。なかでも安南、対面などはともかく、天竺、点鏡以下は詰パラのフェアリーランドでもほとんど出てこないかなり特殊なものだ。そこにさらに透明駒を応用するなど、とても入門書の内容ではない。

 つまり、この本を字義通りの入門書と考えるなら、ふつうに詰将棋やフェアリー詰将棋に慣れ親しんでいる人が、そこに組み込まれた「透明駒」というシステムを理解するためのものという位置づけなのだと思う。ごく一般の将棋愛好家向けのタイトルとしては、透明駒の世界とか透明駒全書とした方がふさわしく、透明駒入門は誤解を招きやすいのではないか。内容の確認ができる書店売りはほとんどなく、ほぼ通販で売られているのだからなおさらだ。そもそも透明駒というのは広大なフェアリーの世界をより豊穣なものにするために考案されたのであり、伝統ルールの詰将棋などそのごく一部に過ぎないという考え方なのかもしれない。それは理解できなくもないが、それならばまずフェアリールールのわかりやすい入門書が先にあるべきで(あるのかな)、それをマスターしたうえで透明駒に入門するのが順序というものだろう。

 さてその前半部分についていえば、内容がよくいえば簡にして要を得ているが、悪くいえば説明不足のきらいがある。どこまで詳しく説明するかの判断は、対象読者の想定や誌面の制約もあり難しいところだろうが、はじめて透明駒という面妖なものに接する人に対してはちょっと不足ではないかと思う。簡単な例題をもっと増やし、それぞれの説明を途中図を多用してもう少し詳しくしてほしいところだ。新しい概念をマスターするには簡単な練習問題を数多く解くのが常道だろう。レベルとしては詰パラ9月号の記念作品展くらいの問題が適当と思うが、これでも実はぼくにはまだ解けない問題がある。あ、ぼくのレベルが低すぎるのか。

 などと文句を書いたけれど、現状では類書が見当たらないし、透明駒について手軽に知りたい、ひとつ挑戦してみたいという向きには格好の書であることは間違いない。そういう意味ではあながち入門というタイトルはミスリードではないのかもしれない。本書を足がかりにして、逆に未知のフェアリーの奥深い世界に親しむきっかけになるかもしれないし、そういう特殊ルール下での挙動などから、透明駒というものの本質的理解が深まるということもあるだろう。本書だけでは練習用の例題が不足という向き(ぼくだ)には、上谷直希さんのミニ作品集がなんと無料で手に入る。解説もていねいで理解が深まること請け合いだ。ぜひあわせて入手されることをお薦めする。

 

210926
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