勝手踏切
いささか旧聞に属することだけれど、山添拓参院議員が埼玉県の秩父鉄道で勝手踏切を横断したかどで鉄道営業法違反で書類送検された話。これはちょっと考えさせられるニュースなので取りあげようと思っていながら時機を逸していた。といっても、リンクを張った記事にあるように、山添氏が共産党議員だからどうこうという話ではない。
勝手踏切とは正規の踏切ではなく、多くは地域住民が通行の利便のためにつくった踏切のことで、今年1月の調査では全国に1万7千ヶ所以上あるそうだ。もちろん勝手踏切といっても単なる踏み分け道みたいなものから、板を渡してそれらしくしたものまでいろいろで、きちんとした定義はないので、実数は把握しきれていないというのが実情だろう。正規の踏切が2019年度で約3万3千ヶ所というから、大ざっぱにいってすべての踏切の1/3は勝手踏切ということになる。ずいぶん多いものだ。ちなみに北海道はたったの24ヶ所だそうで、いくらなんでももっとある気がする。
鉄道事業者にしてみれば安全面から到底容認できるものではないことはよくわかる。正規の踏切ですら事故が多発しており、現在では特別の例外を除けば新線建設時も含め踏切新規設置は認められていないくらいだ。万一事故でもあれば大ごとで、勝手踏切だから自己責任と突っぱねるわけにもいかないだろう。さりとて、沿線住民特に高齢者にしてみれば裏の畑に行くのに毎回遠くの正規踏切まで大回りするのも難儀だし、ということになる。必要悪とまではいわないにしても、苦々しい思いをしながらもあまり強くも言えず黙認というのが正直なところではないか。
ところで今回の話が気になるのは、山添氏が地域住民ではなく、訪問者というか鉄道ファンであり鉄道写真を撮る目的だったということだ。近年、いわゆる撮り鉄が線路近くにはいり込んで物議をかもすことが多い。やれ畑を踏み荒らしただの、勝手に木を切っただのととかく評判が悪い。そんな鉄道ファンが地元の勝手踏切をそれこそ勝手に渡ることもよくあるだろうし、鉄道会社のみならず、地域住民も迷惑することも多いだろう。だから、勝手踏切というのは地元の人がやむにやまれずということでお目こぼしされているのであって、誰もが勝手にということではないのだという判断なのかもしれない。今回の山添氏が特に悪質だったとは思えないが、場合によっては警察沙汰になることもあるよという警鐘なのだろう。
しかし他人事ではない。ぼくも高校時代はよくいなかへ鉄道写真を撮りに行った。そんなときは勝手踏切どころか何もないところで線路を渡ったり線路際を歩いたりしたことなどしょっちゅうだった。もう時効だろうと思うけど、こういうニュースを聞くとごめんなさいとしかいえない。
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