物語は終わらない
数日前に、久しぶりにジュンク堂へ出かけて1時間ばかり店内を散策してきた。前にも書いたかもしれないが、札幌の書店のなかではここが一番のお気に入り。大規模店で品ぞろえが豊富なこともそうだけど、いつも空いていてゆっくり静かに書棚を眺められる。こんな本が出てたのかという掘り出し物にぶつかることも多い。月に一度くらいは通いたいなと思いつつ前回来たのはいつのことやらだ。なにより場所が悪い。ジュンク堂の位置する南一条界隈は三越・丸井を擁しかつては商圏の中心だったが、いまやその軸足は札駅近辺に移っている。ましてや8年後に迫った新幹線開業に向けてその勢いはさらに加速するだろう。ここもよく撤退しないでがんばってるなといつも思ってるくらいだ。
それはともかく、今回見つけたのがローレンス・ブロックの「石を放つとき」という中短編集。2020年末刊だから1年前に出てたのだ。知らなかった。短いとはいえマット・スカダーものの新作がまた読めるとは望外の喜びだ。前に、「物語の終焉」というエントリでクルト・ヴァランダーシリーズのことを書いたときに、そういえばあれもそうだと思っていたのが、全17作で幕を閉じたこのシリーズだ。帯にある堂場瞬一の解説文の「凝った構成も、あっと驚くどんでん返しもない。しかし本作品は、何とも言えない味わいを残す。」、がまさに的を射ている。シリーズのおしまいの方は、スカダーとミック・バルーが夜更けにぽつりぽつりと昔話をする、そんなシーンばかりが心に残っている。もう終わったものと思っていたあの静謐な世界に今一度浸ることができるとはなんという幸せだろう。とまれ、読んでしまうのがもったいない。もうしばらくは眺めているとしよう。
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