オルリスタット
日本ではじめて抗肥満薬が処方箋なしで対面販売可能にというニュース。へえと思ってみたら、何のことはないオルリスタットのことだった。久々に懐かしい名前を聞いた。
オルリスタットは食物中脂質の主成分であるトリグリセリドの加水分解をおこなう酵素リパーゼの特異的阻害剤で、脂質の消化吸収を抑える働きがある。脂質成分の吸収が抑えられるので、過剰摂取による肥満を改善することができる。すでに外国では以前から販売されていたものが、このほど日本でも広く入手可能になるというのだ。
食物中の脂質や糖質の過剰摂取は肥満のみならず種々の生活習慣病の原因になるので、それらの消化吸収を抑える薬品や健康食品がいろいろと出回っている。しかしいろいろな有効成分が知られている糖質と異なって、脂質に関しては活性の高い有効成分がほとんど知られていない。ぼくも現役時代に、いろいろな天然素材から糖質や脂質の消化吸収阻害成分の探索を行ってきたが、こと脂質に関しては目立った成果が得られなかった。
水に溶けない脂質(トリグリセリド)を界面活性剤でミセル状に分散させて働くリパーゼは、反応系をきちんと確立するところから苦労したものだ。そのときにポジコン(陽性対照)に使ったのがこのオルリスタットだった。当時はもちろん国内では入手できなかったので、海外のサイトから直接個人輸入して用いた。できるだけまともそうなサイトを選んだつもりだったのだが、その後しばらくは何やら怪しげなドラッグのDMがたくさん届いて閉口したおぼえがある。
それはともかく、このオルリスタットはよく効いた。こんなに阻害効果の高いものを不用意に摂取したら危ないんじゃないかと思うくらいだ。事実、そのころからネットでは悲惨な事例がいろいろ報告されていた。記事にも「脂肪の排泄(はいせつ)量が増え、下痢などになることがある」と書かれているが、そんなものでは済まないかもしれない。使用される方はくれぐれもお気をつけて。
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