老人たちの読書
コリン・ホルト・ソーヤーの「老人たちの生活と推理」読了。感想はそのうちブクログのページに公開するとして、タイトルが中身を表すといえばまあその通りなのだが、それにしても身もフタもないタイトルだ。原題はとみると、「The J. Alfred Prufrock Murders」となっていた。J. Alfred Prufrockなんて登場人物は出てこないので、いったいなんぞやと無知丸出しで調べてみたら、T. S. エリオットの詩「The Love Song of J. Alfred Prufrock」から採られたものだった。確かに冒頭にその詩が引用されていた。その格調高いタイトルがなんで「老人たちの生活と推理」になるかね。海外小説の邦訳タイトルはかなりいいかげんなものも多いが、もうちょっとなんとかならなかったものか。
それはともかく、読んでいてなんか既視感にとらわれる。前に読んだか、いやそんなことはない。で、ブクログの書棚を見直してみたら「木曜殺人クラブ」を思い出した。介護老人施設に入居している元気なじいさんばあさんが探偵ごっこを始めるあれだ。シチュエーションがよく似ていて、こちらも似たような施設でおこる殺人事件をばあさんたちが突っつきまわす。今の時代ならではというか。そういえば「もう耳は貸さない」の御年89歳の食えないじじいバック・シャッツも施設に入居していたし、エーランド・サーガ4部作の探偵役イェルロフ老も施設入居者だった。別に自分が爺だからといって、こういうものを好んで読んでいるつもりはないのだが、類は友を呼ぶのだろうか。
同じ本を読むのでも、若い時と歳を取ってからではおそらく印象も変わるだろう。出てくる年寄りたちは元気とはいっても、あちこちに老いによる問題を抱えている。ストーリーはおくとしてもそういう周辺の描写に共感できるかどうかで、評価も違ってくる違いない。つまり、ぼくはいま極めて妥当な選書をしているわけだ。なるほどね、アルフレッド・プルーフロックなどと気取らないストレートなタイトルは、読者のセレクションに役立っているのかも。
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