柿胃石
柿胃石というのは、柿を食べすぎることによって胃の中にできる石で、場合によっては手術で摘出する必要があることもあるというABEMAのネットニュース。柿のタンニンが原因で食物成分が凝集して塊になるということだ。確かに柿はタンニン(高分子ポリフェノール)が豊富で柿渋の成分でもあるし、タンニンはタンパク質を代表とする生体成分と分子間結合をつくってそれが種々の生理作用につながる、というのはよく知られた話だ。ぼくも現役時代は植物ポリフェノールがひとつの研究の柱だったし、ポリフェノールの化学について大学院で講じていたので、このあたりのことはよく知っている。しかし寡聞にして柿胃石は知らなかった。柿を多少食べすぎたくらいで胃に石ができて問題になるなんてことがあったら、もっと注意喚起されているだろうし、なんか大げさな煽り記事ではないかと思ったが、ちょっと調べてみるとまんざらネタというわけでもないことがわかった。
「ある大阪での症例によると、67歳の男性が市販の干し柿(500円硬貨大)を7-8個食べた翌日から、食欲不振、嘔吐などの症状が出て、いろいろあった末一ヶ月後に胃石(10×10×8 cm, 100 g)を摘出したという。成分分析では柿タンニンの主成分シブオールは検出できなかったが、タンパク質や多糖類のスペクトルが得られたことから柿胃石と考えられた。柿摂取から症状発現まで1日と短いが、胃石割面に層状構造がなく、短期間に凝集がおきたことが示唆された(岡本ら, 日臨外会誌, 63, 71 (2002))」。干し柿7-8個は大量といえるか微妙だが、ふだんから柿が好きで食べていたとか、症状が出現してからも放置して飲酒を継続していたとか、生活スタイルにも問題がありそうだ。これはかなり特殊なケースだと思うが、しかしこんな短期間に10センチ大もの石になるとは、タンニンの分子結着力はすごいものだ。昔知っていれば授業のネタに使えたのに、残念。
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