超難解詰将棋
ああ、あれか、とピンときた方が多いかもしれない。詰将棋パラダイス2月号で結果が掲載されている昨年11月号出題の大学15番中山芳樹氏作49手詰のことだ。2月号の感想記事を書いていてどうもここが突出して長くなりそうなので、別エントリにすることにした(全体の感想は後日)。なにしろ結果稿で変化紛れの手順説明がほぼ2ページに渡っている。特に最初の10手くらいが難しいようで、たしかに手順を並べてみるだけでもどうにもならない感に圧倒される。ので、もちろんぼくなどに歯の立つ代物ではなく、以下は手順の解説などではなく単なる周辺の感想だ。
ネットでもかなり話題になっていたのでどんなものかと思っていたら、正解者がたったの4名しかいなかった。これを多いとみるか少ないとみるかもさることながら、それ以上に驚きなのが数少ない正解者の短評だ。どの人をとっても、自信がないとか、変化が読み切れないとか、不詰み順があってもおかしくないとか、ばかりで自信をもって解答している人が皆無なのだ。
こうなると逆に不安になる。はたしてそれ正解なのか。4人ともが同じ手順を解答していてそれが作者の作意順と一致しているのだろうから、それが正解とされているのだろう。だけど、解けなかったもっと多くの人がいるのも事実だ。詰パラの解答陣で常に年間満点近くを取っている猛者の中で解けた人が4人。作者を入れても5人。解けなかった人はもっともっと多いだろう。ひょっとしてそっちが正しくて、実は不詰という可能性はないのだろうか。
というのは冗談で、もちろん作者は解答者よりももっともっと時間をかけて丹念に調べているだろうから、万が一にもそういうことはないだろうと思う。しかし、昔の詰将棋で発表当時は完全作と考えられていたものが、後年に不完全だったという例がたくさんあるのも事実だ。人間のやることなので完全ということはあり得ない以上、現代の作品でもそういうことがないとは言い切れない、と凡人のぼくなどは思ってしまう。真実は神様にしかわからない。
いやいや、現代にはコンピュータというものがあり、さらに今やAI全盛の時代だ。それらを駆使して調べればそんなのは一発でわかるとも思う。実はぼくの手持ちのハードとソフトではこの作品は解くことができなかったのだが、もっと高性能のマシンで高機能のアルゴリズムを備えたソフトを使えば解けるのかもしれない。たぶん、誌上で懸賞問題として出題されている以上は、編集部や担当者の事前検討ではそういう確認がされているに違いない。だから作品の完全性は間違いないのだろう。
ということを考えさせられるほど超難解作品であることは間違いないが、正解者が4名もいたというのも驚きだ。ただ、上には上がというべきか、たしか以前の作品で正解者ゼロというのもあったように記憶する。作者しか解けない、いや作者は作る方だから厳密にいうと解いてはいないのか。こうなるといったいどうなんだろう。それってパズルとして成立しているのかという気にすらなる。正解者がいないということは評価点も付かないので、好作か駄作かの評価すらできないということになる。単純に難解イコール好作とはいえないから、正解者がいないことをもって好作だということにはならないだろう。
本作の評価点はというと、正解者全員がA評価の満点ということだった。解いてどのていどの達成感があったかは、解いていないぼくなどには想像もつかないが、おそらく圧倒されての高評価だったのではと推測する。この作者の中山氏は過去作も超難解作ばかりで有名な方のようだ。頭の中がいったいどうなっているのかのぞいてみたい気がする。
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