袋とじ本
懐かしい物に出くわした。
袋とじ本といっても、某大手出版社の週刊なんちゃらのグラビアページの話ではない。しかしあれはなー。立ち読み防止という名目なのかもしれないが、伝統ある出版社の部数を伸ばしたいだけのための扇情的な企画にはあきれる。創業者は草葉の陰で泣いているだろう。
話がそれた。そういう低次元の話ではなく、バリンジャーの小説本の話だ。昔、創元推理文庫の「歯と爪」を読んだのがこの袋とじ本。結末部が袋とじになっていて、封を破らないで返品すれば代金を返してくれるというものだ。ふつうのミステリでも途中まで読んで結末を読まずに返すということはありえないが、そこはバリンジャーだ。とうてい止められるはずもなく封を破って最後まで読んだ。期待に違わずおもしろかった。
今回再会したのは、同じバリンジャーの「消された時間」。こちらはハヤカワポケットミステリの1冊でやはり同じ様式だ。これは図書館で借りたものなので当然封は切られているし、だいたいが古い本で返金有効期間が昭和34年となっている。読者への告知文を読むと、もともと原書がアメリカでこの返金保証という企画を始めたもので、それを邦訳版の出版社が踏襲しているのだとわかる。創元も早川もそういう愛すべき稚気があったのだな。上記某出版社とは大違いだ。
ただしアメリカとは違って、本書では封を破らずに出版社まで持参したときのみ代金を返金するとなっていて、なかなか条件が厳しい。アメリカでは小売店で返金してくれたようだがそれもすごい話だな。しかし、神田の早川書房まで出かけて実際に返金してもらった人ってどれくらいいたのだろう。
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