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2023年6月17日 (土)

先手必勝

 先手必勝が世の習い。囲碁将棋などのゲームでもしかり。さすがに先手が必ず勝つわけではないにせよ、ハンディをつけないと明らかに先手が有利だとしたら、これは問題だ。詰将棋パラダイス6月号のおもちゃ箱だよりに、コンピュータ将棋ソフトが角換わり腰掛銀定跡の基本図では先手が100戦100勝だという驚くべき話が載っていた。これではゲームにならないのでは。

 周知のように囲碁では先手番の優位性を補正するためにコミがある。現在は6目半となっていて、先手番は7目余分に陣地をとらないと勝てない。コミの大きさは時代とともに変遷し、1930年代には4目半だったのが1960年代に5目半に、さらに2002年から6目半となった。戦術の高等化とともに先手番の優位性が高まってきたということだろうか。今後AIの進化によってはさらに差が大きくなるのかもしれない。

 目数で勝負をつける囲碁ではこういうことが可能だが、将棋ではそういうわけにはいかないのが難しいところだ。先手必勝が古くから知られている連珠では、黒番だけに三三禁などの制約を課しているほか、打ち始めの石の配置を規定して均衡を保っている。それなら将棋でもということで、パイルールというおもしろい方法が最近のコンピュータ将棋大会で採用されたと上記記事に載っていた。これは先手がある手を指したときに、後手がその手が有利と判断したら、そこから手番を交代して指す権利があるという方法だ。

 たとえば先手が普通に76歩と指す。後手がこれは有利だなと思えば、手番を交代してそこから76歩側をもって指すことができる。先手番有利といっても初手の30通りの可能性のどれを指しても有利というわけではないだろうから、先手が初手18香みたいな手だと後手は交代しないでそのまま指せばよい。なるほどね。ということは初手の30種類の可能性についてすべてAIに徹底的に対戦させて勝率を算出し、先手の勝率が有意に高い数手?を禁手としてしまうというのも可能なのでは。戦術の幅が限られるとか異論が出そうではあるな。

 そういえば、超名人同士の対局で、先手が初手を指したのを見て、後手が負けましたと投了するという笑い話があったが、もうそれが笑い話ではなくなるかもしれない。そのとき将棋連盟はどう対処するのだろうか。

 

230617 
未来の投了図 

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