読書用眼鏡
京極堂シリーズ最新刊「鵼の碑」が発売になった。前作刊行時にタイトルが予告されてから実に17年ぶりの実現だ。それまでは数年間隔でシリーズ作が連続刊行されていただけに、この長きにわたる遅滞はいろいろな憶測をよんでいた。それはともかく、首を長くして待ち続けていた一ファンとしてはとてもうれしい。
これは心して読まねばならないということで、読書眼鏡をつくった。ぼくは外出時は眼鏡をかけているが、左右の視力差が大きく、裸眼でも日常生活ではほとんど不自由しない。というのも、右目は視力が0.6あるので、遠くがそこそこ見えるし、左目は視力0.15の近視のおかげで老眼の進みが少なく、近くのものがちゃんと見える。つまり遠くは右目、近くは左目と分業して困らないというわけだ。脳というのは大したもので視線を動かしてもギャップはまったく感じない。
眼鏡で矯正すれば両眼で見えるようになるが、遠くも近くもというわけにはいかないので、遠近両用というひずんだレンズを使わねばならない。これがなかなかやっかいなものだ。しかも歳とともに老眼は進行し、それにつれて近視が改善されてきたりする。眼鏡はつくりかえねばならない。それでなくても眼鏡は邪魔だ。冬は曇るし夏は暑い。なので、家の中では裸眼で暮らしている。それがここへきてなんか目が疲れるなと思ったら、右目の老眼が進行して本の字がかなりぼやけているのに気づいた。かといって本を遠くするとこんどは左目が見えにくくなる。というわけでこの機会に読書専用の眼鏡をつくることにしたのだ。
たしかに快適だ。読みやすい。もっと早くつくればよかった。が、いいことばかりではない。ほんとに手元しか焦点が合わないので、本から顔を上げるとたちまち視界がぼやける。壁の時計すら見えない。専用なので融通が利かないのは当然なのだが、あらためて裸眼の便利さを思い知らされた。