カテゴリー「星・宇宙」の記事

2022年6月 8日 (水)

リュウグウのアミノ酸

 はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った砂から20種以上のアミノ酸が検出されたという数日前のニュース。これにはびっくり。わくわくして続報を待っていたけれど、それ以来なんの音沙汰もない。いろいろなニュースサイトを見てみたがいずれも大同小異で詳しいことがまったくわからない。単に生命活動に関係が深い有機物であるアミノ酸が20種類以上検出されたというだけだ。文部科学省への取材で分かったもので、生命の誕生に必要な材料がどのように供給されたか考えるうえで重要な成果とニュースでは持ち上げているが、しかしこれはちょっとフライングじゃないかな。

 アミノ酸は生体を構成する重要なパーツであるのは間違いないが、仮に地球外で生成したとしてそれだけが特異的に検出されたとは考えずらい。アミノ酸が20種以上も見つかったのならば、他の生体成分である有機化合物がたくさん検出されてもおかしくないし、逆になければおかしいだろう。そもそもそのアミノ酸がどういう分析手段で確認されたのかも明らかではない。20種というのがどういう分子種なのか、タンパク質構成アミノ酸は含まれているのか、D体かL体かとか知りたいことがいっぱいある。

 取材するにしてももうちょっと突っ込んで訊いてほしいものだよ。サイエンスコミュニケーターいなかったのだろうか。文科省の担当者も詳細は分かってないのかもしれないけれど。分析を行っている8チームが結果をまとめる段階に入っており、今後詳細データが論文で公表される見込みとのことなので、それを待つしかないのだろうな。

 

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NHK NEWS WEBより

 

2021年12月 2日 (木)

オミクロン

 最近のトレンドはオミクロン。24個あるギリシャ文字のなかの15番目だが、ふだんはめったにお目にかかることのない文字だ。WHOでは新型コロナウイルスの変異株のうち注目すべきものにαから順にギリシャ文字を振っていて、話題のオミクロン株はその13番目になる(直前のニューとクサイは諸事情から飛ばされた)。ついこの間デルタ株が第5波感染拡大を引き起こしたばかりなのに、いつのまにかもうオミクロン。その間にイプシロンだのイータだのカッパだのが全部あったのだろうけれどそれらは話題にならず、突如オミクロンが現れた感がある。

 ギリシャ文字自体は自然科学ではいろいろなところで使われていて、化学の世界でも、α-アミノ酸、β脱離、π電子などなどおなじみだし、数学や物理学ではもっといろいろと使われている。しかしオミクロンというのはあまり聞いたことがない。たぶんギリシャ文字のοがローマ文字のoと似ていてまぎらわしいからだろう。ひょっとしてオミクロンがこんなに話題になるのは有史以来初めてではないか。

 と考えていて思い出した。ひとつだけあった。くじら座のο星ミラだ。星好きなら知っているだろう。星座の中の恒星を昔は明るい順にαβγ...と振っていたので、ミラはくじら座の15番目の星になる。α星、β星などはともかく15番目が表舞台に出てくることはまずないのだが、ミラは特別だ。長周期変光星の代表格で、ミラ(不思議なものの意)という固有名がついていることからわかるように昔から有名な星だ。ちなみにそのミラ、今年は7月下旬に極大光度になったそうだ。残念ながら今はもう暗くなってしまっているけれど、くじら座は初冬の星座で12月初めだと21時頃南中だからこっちのオミクロンを見るなら今がチャンス。

 

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くじら座ο星ミラ(AstroArts webページより)

2020年12月20日 (日)

木星と土星の超大接近

 約400年ぶりという木星と土星の見かけの超大接近。いよいよ明日明後日が最接近となった。最接近時の両者の間隔は約0.1度と、月の見かけの直径の約1/5しかない。肉眼では分離して見えないかもしれないというから、これはすごい。昔、視力検査に使われたという北斗七星の二重星ミザールとアルコルの間隔が約0.2度だから、それよりも厳しい。ただし光度がミザール(2.3等)とアルコル(4.0等)より、今回の木星(-2.0等)と土星(0.6等)の方がずっと明るいので見やすいかも。

 今回を見逃すと次回同じくらい接近するのは60年後の2080年というから、なんとか明日か明後日は見たいものだが、問題は天気だ。なんといってもこの季節だからな。晴れさえすれば空気が澄んで観天には最高の時期なのだが、雪雲が流れてきたら絶望的だ。今日は、日中大雪で30センチくらい降ったけれど、夕方には晴れてちょうど縦に並んだ木星と土星がきれいに見えた。間隔は0.3度くらいだろうか。明らかに月の直径より近いが、まだ余裕で肉眼(裸眼ではない)で分離して見えた。さて明日はどうなるか。

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AstroArts webページ「木星と土星の超大接近」より

2020年12月 6日 (日)

はやぶさ2の帰還

 はやぶさ2が無事に帰還し、分離したカプセルの回収に成功したという。ニュースといえば新型コロナばかりだったのでこういう明るい話題はうれしい。今回はまずは順調といっていい探査行で、今後は持ち帰ったであろう小惑星リュウグウの試料解析が期待される。

 はやぶさといえば10年前に帰ってきた初代はやぶさをどうしても思い出してしまう。初代のはやぶさはとにかくトラブルに次ぐトラブル続きで、通信途絶により数か月行方不明になったり、姿勢制御、太陽電池、イオンエンジンなどの相次ぐ不具合で、何度ももうダメなのではという事態に追い込まれながら、綱渡りのような運用を続けて、満身創痍でなんとか地球帰還を果たし、最後は大気圏再突入で燃え尽きてしまったのだった。

 そのようすを我々はできの悪い子どもの悪戦苦闘を見るように、固唾をのんで見守り、一喜一憂したものだ。回収されたカプセルは各地で展示されてどこも行列になり、ぼくも東京出張の折に国立科学博物館の展示を見に行って、はやぶさグッズを買ってきたりした。映画化されたのも観て感動を新たにもした。

 今回はそんなドラマがほとんどなかったので、なんか物足りないなどというと関係者の方々に申し訳ないか。前回の教訓を生かして改良を加えた成果が、今回の成功につながったのだから、これはもう科学技術の勝利といえるだろう。おめでとうございます。

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初代はやぶさグッズ

 

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